深い理解のために

 

「数学の画像(Images des mathématiques)」掲載の資料:

  • Étienne Ghys著「バタフライ効果(L’effet papillon)」(フランス語)
    モロッコでの一発の銃弾… 偶然の事故が,アメリカ人夫婦の人生を変え,メキシコ人の
    乳母の人生を変え,日本人少女の運命を変える.小さな原因と大きな結果が合わさるのだ.人類の運命を考えると,それは偶然に従うのか,必然なのか.アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの2006年の手に汗握る映画バベルだ.映画の批評には,必ずバタフライ効果が表れており,これが数学的現象として一般市民に最もよく知られたものだということを示している.

  • Étienne Ghys, Jos Leys共著「ローレンツの水車(Le moulin à eau de Lorenz)」(フランス語)
    エドワード・ローレンツ(1917-2008)は,数学者,情報学者,物理学者,気象学者のどれでもなかった,いや彼は同時にそのすべてを行っていた:こういう学者たちに多くの課題を残した大科学者である.彼は,カオスの考え方を明快に説明するために水車の発明もした…

  • Safieddine Bouali, Jos Leys共著「カオスの彫像(Sculptures du chaos)」
    カオスという言葉が想起させるのは,動きのとれない理解のできない,まったくの無秩序である.簡単そうに見えていても,いくつかの数学モデルがカオスのダイナミックスを生成する.それは注目すべき特徴を持つ:カオスのダイナミックスを画像表示すると,奇妙なアトラクタと呼ばれる思ってもみなかったような数学的造形物が出現する.

 

無視できないオーディオ・ブック ;-) :

  • Étienne Ghys著「カオスの理論(La théorie du chaos)」(フランス語)
    我々は偶然というものに導かれているのだろうか,あるいは必然というものにだろうか?決定論の歴史:ニュートンから始めて近年のカオスの理論の発展に至るまで解説する.

 

一般向け書籍:

  • James Gleick著「カオス―新しい科学をつくる(Chaos: Making A New Science)」
    人気のある数学の予備知識を必要としない本書は,マンデルブロー集合,ジュリア集合,ローレンツ・アトラクタを説明している.カオスの理論の発展に貢献した10数人の科学者の肖像もある.

  • Amy Dahan-Dalmedico, Jean-Luc Chabert, Karine Chemla編「カオスと決定論(Chaos et déterminisme)」
    異分野の専門家を集めた本書は,決定論とカオスの概念の,数学的,物理的,哲学的な側面を描き出す.不安定性とカオスと決定論の問題にまず取り組もうという読者に適している.しかし,本書のいくつかの論文を読むためには,ある程度の予備知識が必要である.

 

4編の数学論文:

  • Étienne Ghys著「ローレンツ・アトラクタ,カオスのパラダイム(L’attracteur de Lorenz, paradigme du chaos)」(フランス語)
    カオスを主題にした2010年6月5日のポアンカレ・セミナー(séminaire « bourbaphy » XIV)のために書かれたものである.この論文を読むためには修士のレベルの数学が必要である.特に,実際により深く理解するための文献が掲載されている.
     
  • Étienne Ghys著「バタフライ効果(The butterfly effect)」(英語)
    2012年7月にソウルで開催された第12回数学教育国際会議における出版物である.この論文では,特に一般市民に科学的考え方を伝える必要と困難について述べている.バタフライ効果の歴史について,何人かの科学者の着想から現代にいたるまでを述べている.
     
  • Étienne Ghys, Jos Leys共著「ローレンツ・フローとモジュラー・フロー:視覚的入門(Lorenz and modular flows: a visual introduction)」(英語)
    アメリカ数学会の特集記事として出版された本論文は,視覚的にモジュラー・フローを紹介するとともに,モジュラー結び目とローレンツ・フローの軌道の結び目の関連に関するÉtienne Ghysの定理を説明している.ここでも修士のレベルの数学,少なくとも確固たる大学卒業レベルの数学が必要である ;-).
     
  • Marcelo Viana著「ローレンツの奇妙なアトラクタ研究の現状(What’s new on Lorenz strange attractors ?)」(英語)
    学術雑誌The Mathematical Intelligencer 22巻 3号 6-19ページ(2000年)に出版されたこの論文は,ローレンツ・アトラクタのわかりやすい解説である.しかし,これは一般市民向けではなく,一定の数学のレベルを必要とする.

 

専門家向け書籍:

  • Christian Bonatti, Lorenzo J. Díaz, Marcelo Viana共著「一様双曲性を超えるダイナミックス:総体的な幾何的確率的視点(Dynamics Beyond Uniform Hyperbolicity : A Global Geometric and Probabilistic Perspective)」(英語)
    専門家(志望者)向けの本書は,力学系理論の現代的なアプローチと最近までの理論の発展を解説している.誰にでも読めるというものではない!

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